通信制高校への進学者はどのような人たちでしょうか?

通信制高校は、そのカリキュラムや授業内容が充実しつつあり年々入学者が増加しています。世間で言われるように、全日制や定時制に適応できず辞めてしまって通信制高校へ入ってくる生徒も少なくありません。ただし、通信制高校に進学する生徒は、様々な動機や目的を持っており一概に全日制や定時制からの転入者とは限らないのです。

通信制高校にはどんな生徒が進学してくるか紹介しましょう。

フィギュアスケート・ゴルフなどのスポーツやバレエ・楽器などの音楽といった分野で、若いうちからプロや一流選手・一流演奏家を目指している若者は大勢います。海外のクラブチームで活躍するプロサッカー選手の堂安律氏は通信制高校に通っていました。

俳優や芸能人を目指す人の入学も珍しくありません。ジャニーズの人気グループ「嵐」の二宮和也氏や「キンキキッズ」の堂本光一氏も通信制高校の卒業生です。

中学卒業で義務教育を終えた後プロになるための遠征や合宿を伴う本格的な訓練や練習を始める人にとって、全日制や定時制のように毎日通学する形態を選択することは困難と言えるでしょう。

そこで、年に数回のスクーリングに参加する以外は在宅で勉強できる通信制高校は、彼らに最適な学習の場となっているのです。

通信制高校は、高校卒業の資格を得ることだけが唯一の目的ではありません。ファッション・デザイン・建築などの専門コースを備えている通信制高校が数多くあります。そのほかにも、芸能や福祉などの専門コースを設置している通信制高校もその数を増やしてきました。

高校卒業後に即戦力として現場で働きたい人や座学の知識獲得だけでなく実地訓練を積みたい人が、自分のスキルを磨くための場を提供してくれる専門コースはとても人気があります。専門コースには通常の教員だけでなく専門分野のプロが直接指導してくれます。

たとえば、芸能コースであれば芸能プロダクションと提携してオーディションの受け方などの指導を受けることもできます。また、福祉コースに所属すれば介護施設を訪問して介護体験をすることもできて、介護の資格取得につなげることも可能です。

通信制高校は、単に卒業しただけでは4割の卒業生が就職も進学もしないという現実があり、専門コースの存在意義は高まる一方だと言えるでしょう。また、専門コース以外にもプログラミングやライティングの授業も開講している通信制高校もあります。

こうした個性的な科目は通信制高校の特徴の一つでもあり、入学希望者から注目されています。プログラミングの授業は、趣味としてゲーム制作にトライしたい生徒やシステムエンジニア・プログラマーになりたい生徒から人気があります。

ライティングの授業は、小説やエッセイの書き方を学ぶ講座で、将来の小説家を目指す生徒だけでなく文章の作成方法を学びたい生徒にも参加希望者が多いと言えます。

家庭の事情などにより家計を助けるため勤労に従事せざるを得ない人は、通信制高校を利用することがあります。公立の通信制高校であれば、かなり安い授業料で利用することができるため支出を減らしたい勤労者には適しています。

従来は勤労者のために定時制が活用されてきましたが、登校日の少ない通信制高校に入る者が増えてきました。ネット環境とパソコンさえあればオンラインの通信講座を受講できるので、通信制高校は定時制のように毎日通学する必要がありません。

毎日の労働で疲労困憊した労働者には、毎日の通学を強いられる定時制よりも自分の空き時間に受講できる通信制高校の方が利用しやすいと言えるでしょう。年に数回のスクーリングには参加しなければなりませんが、短期集中の合宿もあるので年休や祭日などを組み合わせて参加することは可能です。

いじめや不登校など様々な事情で高校中退を余儀なくされた生徒たちが再起を期して通信制高校に入学するケースが多く見られます。不登校が長期化して引きこもりとなってしまった場合にも、改めて通信制高校に再挑戦する場合も珍しくありません。

以前通った学校に一定期間通学して取得した単位を通信制高校に引き継ぐことも可能な場合もあります。毎日の通学が苦痛だった生徒であっても、通信制高校であれば登校日が少なくて済むので負担が軽減されるでしょう。通信制高校は、個人面談を頻繁に行って様々な問題を抱える生徒と向き合い、快適なスクールライフを送れるように支援しています。

以前通学していた学校では人間関係に悩んでいた生徒も、同じような問題を抱えて入学してきた学友と悩みを共有し、見違えるように明るくなることも珍しくありません。集団に馴染めず通学が困難な生徒であっても、カウンセリングや生活相談を重ねることによって在宅コースから通学コースに変更できたケースも報告されています。


通信制高校では、発達障害(アスペルガー)などの障害を持つ人たちにも門戸を開放しています。特別支援学校に通うほど重度ではなくても、通常の高校には適応できない発達障害の生徒が少なくありません。発達障害のほか、社会不安障害やパニック症候群など大勢の共同生活を長時間強いられる通常の高校に適応できない障害者は、通信制高校に入学するケースが多いと言えるでしょう。

さらに、軽度の学習障害の生徒も通信制高校では受け入れています。通信制高校の授業は中学の段階で後れを取った生徒のフォローも考えているので、生徒の理解の程度に応じて中学の学習内容についても復習の指導をしてくれます。

通信制高校では、こうした生徒と保護者に対して綿密な面談を行って生徒に最適の学習方法を提案してくれるのです。

仕事・病気・出産など様々な個人的事情により中学卒業後高校に進学できなかった人たちが通信制高校を利用する場合があります。通信制高校の生徒の年齢層は幅広く、中には半分以上が成人という学校もあります。成人になってからは、未成年がほとんどを占める通常の高校に再入学するより在宅学習がメインとなる通信制高校は馴染みやすいという事情もあるでしょう。

成人になってから通信制高校に入学するほとんどの場合には、働きながら勉強することになるので登校日の少ない通信制高校が有利であるという理由もあります。社会人には貴重な自由時間を生かして高校卒業資格を取得しなければならないため、モチベーションが高く意欲的な生徒が多いと言えるでしょう。